昨年12月、福岡県警は県議会に県迷惑行為防止条例改正案を提案。各メディアの報道によると、中洲など県内の主要繁華街を禁止区域に指定し、風俗従業員 のスカウト行為や客引きを一掃していくという県警の方針が報じられた。県警はこの改正案に関連条文を盛り込み、もともと客引き行為やスカウトが禁じられて いたソープランドなどの性風俗業種に加えて、キャバクラやホストクラブ、ガールズバーが新たに規制の対象となる。ガールズバーに対する規制は全国でも初の試みで、可決されれば'15年の６月より実施されることになるという。

　この条例改正案により中洲はどのように変わるのか。今現在の中洲を本誌記者が歩くと、次から次へと呼び込みや客引き行為の声がかかる。客引き行為を路上で行い、お店へお客を紹介することで報酬を得る彼らは通称〝キャッチ〟と呼ばれる。主にキャバクラや、セクシーパブを中心に時には性風俗店へも案内することもあるという。もちろんこれは迷惑防止条例で禁じられている行為。さらに、強引なつきまとい行為は風営法で禁止されており、数年前に逮捕されたというあるキャッチは、私服警官に声をかけ、あげく55㍍もつきまとったとしてその場で捕まってしまったとか。そこまでのつきまとい行為はなくても「飲みですか？　おさわりですか？」との声かけはそこかしこで聞こえてくるのが現状だ。ただ、こういった客引き行為を行う〝キャッチ〟を雇うことも、今回の改正案では性風俗業種に加えキャバクラ、ホストクラブ、ガールズバーでも禁じられるようになる。また、警察対策なのか、声はかけずに通行人からの問いかけを待つという〝客待ち〟行為も禁止となる。今あげた客引き行為の全部がこの改正案により一掃されれば、まさに寂れるくらいに静かな街となりそうだ。

　ただ、最近の中洲ではこの改正案を見越してなのか、キャッチへの取り締まりはすでに厳しくなっているという。「私服警官も多く見回りしているようだし、仕事がやりにくくなってるよ。週末の稼ぎ時なんか特に厳しくて、ほとんど仕事が出来ないんだから」とは、中洲でキャッチを始めて2年になるというM氏。彼は多いときで月に50万から60万くらい稼いでいたというが、最近はその半分くらいで終わることも多いという。稼げなくなったキャッチたちは、客のニーズに合った優良店を紹介するというよりも、稼ぎを優先してバックが多いお店に案内している者もいるようだ。そういったお店の中にはぼったくりに近いこともいとわないお店もあったりで、お客とお店が揉めてトラブルになったという話もよく耳にする。キャッチなど客引き行為がらみでの県警への苦情は、年間で1千件近くも寄せられているという。

　キャッチのなかには一部の無料案内所と提携し、捕まえた客を一旦案内所に連れて行くことで客引き行為に見せないよう偽装することもあるようだ。中洲の裏通りにある案内所と提携しているキャッチの場合は、大通りで捕まえた客をそこまで連れて行かなければならないため効率が悪いようだが、大通りの案内所と提携しているキャッチはこの方法で十分な稼ぎを確保しているとも。だが、この方法ももちろん今回の条例改正案では禁止行為。最近の取り締まり強化や今後の改正案を控えて、キャッチたちの中では「もう案内所で直接働きたいよ」とグチをこぼしている者もいるとか。

　そして、今回の改正案では警察の狙いが他にもある。先のＭ氏は言う。

　「聞いた話だけど、暴力団にみかじめ料としてひとりアタマ月に2万とか3万くらい払ってるらしいよ。キャッチのほとんどはグループで活動してるんだけど、だいたい40名とかでしょ。ひとつのグループで月に100万近くになるんだから、いいお金だよね」

　県警はこの資金源を断つことで、暴力団の排除をも推し進める構えだ。

　この改正案により、今まで以上に厳しい取り締りや、新たなる客引き行為の規制が進み、より安心安全な繁華街になっていくことに期待がかかる。我々ユーザーとしても、ひとりひとりが違法な勧誘に付いていかないことで、自分の身を守り、さらには客引き行為を駆逐し街の浄化へと繋げていきたいものだ。